「事業復活支援金では、2019年以前から国内で事業を行っている者」が支給対象者になります。しかし新規開業特例があり、その要件を満たすと(2019年)2020年及び2021年に新規開業した事業者であっても支給対象となり得ます。2019年の新規開業者は通常申請と新規開業特例のどちらかを選択でき、新規開業特例では通常申請の基準期間に相当する期間が限定または変則固定(決められた期間)となり、結果的に給付の額が増える場合があります。なお、いずれの場合も対象月は同じです。
そして、新規開業特例では、通常申請に必須な書類に加えて(若しくは代替として)必要な書類があり、給付金額の計算方法も異なります。(そもそも新規開業特例は「給付金額等の算定の特例」という位置づけです。)
新規開業特例の前に、事業復活支援金の申請区分(事業者が選択する必須項目)の視点から、新規開業の年度別に考えると、次のような申請方法になることは知っておく必要があります。*新規開業日とは開業届に記載されている開業日の事です。
2019年中の新規開業者の申請方法は2つの区分で可能です。
A、通常申請
【基準期間Y:2019年11月-2020年3月】
【基準期間Z:2020年11月-2021年3月】
の2つから選択。認められれば証拠書類の特例(A-1)の利用可
B、新規開業特例申請(B-1)
※A.Bいずれでも自由に選択可能。
2020年中の新規開業者の場合は次の2つの区分で申請が可能です。
A、書類代替特例申請(A-1)
【基準期間Z:2020年11月-2021年3月】
*証拠書類の特例(A-1)の利用可
B、新規開業特例申請(B-1)
2021年新規開業者の申請方法は1つだけです。
A、新規開業特例申請(B-1)
2019年の新規開業者が新規開業特例を利用する場合と、通常申請を行う場合の違いは、基準期間です。基準期間が異なれば給付金額にも違いが出ます。例えば、白色申告者は月売上を年収÷12で計算しますが、2019年新規開業特例を利用した場合は、年収÷開業月から12月までの月数で算定されます。そうすると、基準月の売上金額が増えることになり、その結果として支給対象になることに加えて支給金額も増えることになります。
開業日前に事業収入がある場合は、特例申請を利用することができません。特例申請を利用する場合は、以前の事業を廃業し、廃業した月から開業月までの間に個人事業収入がないことが必要です。特に青色申告の月別売上の記載で開業月よりも前の月に売上額がある場合は注意が必要です。
確定申告書の控え(新規開業特例での必要書類)
- 開業年から2021年全ての確定申告が必要になります。
ただし、2019年の新規開業で2019年の確定申告の義務がなく住民税の申告の控えがない場合で事務局が認める場合、2019年の確定申告書を開業届で代替することができます。この場合はその年度の収入を0として考えます。(証拠書類等の特例です)
ただし、2020年の新規開業で2020年の確定申告の義務がないく住民税の申告の控えがない場合は事務局が認める場合、2021年の確定申告書以外を開業届で代替することとができます。この場合はその年度の収入を0として考えます。(証拠書類等の特例です) - 開業届・事業開始等届出書(もしくは同等の書類)の控えが必須とされています。そして、開業届等の書類の日付についての注意点(期日)は、選択する特例によって次の通りとなっています。
2019年1月から2020年12月の新規開業者の場合は、開業届日が2020年12月31日以前となっていて、収受印(e-taxは受信通知)の日付が2021年11月30日以前(令和3年)になっているもの
2021年1月から2021年10月の新規開業者の場合は、開業届日が2021年10月31日以前となっていて、収受印(e-taxは受信通知)の日付が2021年11月30日以前(令和3年)になっているもの
「開業届なし」といった開業届などが存在しない場合はどうなるのか、その対処法はあるのか?という事を疑問に思っている事業者もいるとおもいます。
支援金の制度は2019年以前の開業者を対象とするのが基本であって、2020年2021年の新規開業者は、開業届を提出することによって支給対象となり得る「例外措置」であるので、例外の例外は考えていないというのが一応の公式見解です。
ただ、自身が新規開業だと考えている事業者でも、開業届の必要ない通常申請が行えることもあります。開業届が無い理由は様々ですが、実際の事業状況によって、開業届が無い場合でも2019年から(実際に事業を行っていたなど)申請書類を揃えることはできます。
※開業届が無い場合の申請であっても、申請書類を揃えること自体はできると思いますが、事前確認が通過できない可能性が高いです。通過した場合でも、追加資料の提出を求められ、それが揃えられずに期限が過ぎることになりかねません。よって、2020年以降に事業を開始した場合で開業届が無いときは、そういう制度(2019年以前に開業した事業者が対象)であると受け入れるしかありません。*実際の事業開始が2019年より前であれば申請書類はそろい得ます。
支援金は基本的に【事業収入の欄が0円か数字の記載がない方以外】が対象です。(雑・給与所得者も対象ですが)一般的には確定申告書の【事業収入が0円の場合と何も記載がない】(空欄)の場合では、0円の場合は事業を行っていないとは言い切れません。この一般的な捉え方とは異なるような言い回しでの【事業収入の欄が0円か数字の記載がない方以外が対象】という文言ですが、支援金ではそもそもそこは、支給対象の是非としてあまり重要ではありません。
これに関連して開業届が無く、途中から事業収入に数字があがっている事業者は多く存在しますが、それはそれで問題ではありません。本当に開業届が必要なのか?そもそも開業届があって場合でも、それで新規開業特例によって受給するのは不正受給ではないのか?という部分を再度考える事をお勧めします。(関連記事は後記)
新規開業特例の基準期間と対象月の考え方(事業復活支援金の場合)
2019年・2020年の新規開業特例の基準期間と給付金額
2019年1月から2020年12月の新規開業者の場合は、次のいずれかの方法による比較で30%以上の売上減少の月を確認します。
- 開業年の月平均収入金額と2021年11月または12月(対象月)で比較
- 開業年の翌年の同じ月の月間収入と2022年1月から3月までのひと月(対象月)で比較
すると、新規開業特例の場合、給付金額にも影響する基準期間となるのは、開業した年月から開業した翌年3月までの期間となります。(実際に、給付規程の「基準期間」を「開業日の属する月から開業日の属する年の翌年の3月までの期間」と読み替えることとなっています。
給付金額の計算方法
新規開業特例の給付金額の計算は、
(開業年の月売上平均×2+開業翌年1から3月売上合計)ー(対象月×5)
という計算になります。
つまり、各年開業年別にみると、
2019年中開業で新規開業特例の利用では、「2019年の月平均売上金額×2+2020年1月~3月の合計売上ー対象月×5」
2020年中開業の新規開業特例では、「2020年の月平均売上金額×2+2021年1月~3月の合計売上-対象月×5」
*ただし、白色申告の基準期間に相当する月あたりの売上は年平均で算出ます。この白色申告の月当たりの売上の考え方は通常申請と同様に、確定申告の「事業収入÷月数」という計算式で求めます。
例)「2019年の月平均売上×2+2020年の月平均売上×3ー対象月×5」
例)「2020年の月平均売上×2+2021年の月平均売上×3-対象月×5」
ということになります。
なお、対象月の特例はありません。
2021年新規開業特例
2021年1月から2021年10月の新規開業者の場合は、次の方法で30%の売上減少の月を確認します。
開業月から2021年10月までの月平均収入と2021年11月から2022年3月までのひと月(対象月)を比較
ただし白色申告者は、事実上的に2021年度の月平均と対象月となる2022年1月~3月のひと月の比較となります。
よって、規程中の「基準期間」は「2021年新規開業特例基準期間」と読み替えることとされています。
給付金額の計算方法
給付金額は、
開業月から2021年10月までの月平均売上額×5-対象月×5
と計算します。(2021年の新規開業特例を利用の場合に限る)ただし、白色申告者は対象月を1月~3月として2021年の月平均×5-対象月×5
現時点ではこういった説明内容になります。
新規開業日前に事業収入があると認められる場合
開業日以前(開業月より前の月)に事業収入がある場合は(特に青色申告の決算書において開業月よりも前に事業収入が認められる場合)新規開業特例の対象外となります。
もし開業月前に事業収入がある場合に新規開業特例を利用する場合は、開業日以前の個人事業を廃業し、廃業月から開業月までの間に事業収入が無いことで新規開業特例の申請が行えます。
開業届不要な個人事業主の事業収入の有り無し(主に事業収入、主に雑・給与所得の混合)
個人事業主の中には2018年、2019年、2020年で事業収入があるか無いかというところで、年度別で事業収入がなかったりあったりすることがあると思います。こういった場合は、令和1年、令和2年に事業収入がないがそれ以降の事業収入がある、つまり令和2年、令和3年には事業収入があるがそれ以前にはないという傾向が多いと思います。
ややこしいので重要な1つの結論から言うと、事業収入がある確定申告が一年度分だけの場合に事業復活支援金の申請ができるケースは2つだけです。
それは、2021年(令和3年)に事業収入があり、2020年、2019年に事業収入がないケースです。ただし、基準期間は2020年11月から2021年3月に限られます。
もう一つは、2020年(令和2年)に事業収入があり、2018年、2019年に事業収入がないケースです。ただし、基準期間は2019年11月から2020年3月に限られます。(2020年11月から2021年3月を基準期間とした申請も行い得ますが、対象期間に売上があるのが条件です)
上記は特例ではないので、事業復活支援金の基本ルール(給付金額の計算方法や2019年以前から事業を行っている事、今後も事業を継続する意思がある事、基準期間による必要な確定申告書を提出する事など)が適用されます。
法人成り特例
基準月と対象月の間に個人事業から法人に事業形態を変更した場合は、(新規開業特例の他に)法人成り特例での申請が行えます。
法人成り特例を利用した場合は、個人の事業収入と法人の事業収入をそれぞれ比較して支給金額を算出することができます。
さらに法人化(法人設立)が2022年1月1日までの場合は、給付上限金額が法人規程(個人事業主の倍以上)となりますが、2022年1月2日以降に法人化(法人設立)した場合の給付上限は、申請者が法人であったとしても個人事業主の規程が適用されます。
申請必要書類は通常申請と同じですが、特別に必要となるの内容の書類があります。それは設立の形態で「個人企業を法人組織とした法人である場合」が選択されている法人設立届出書です。この法人設立届書を提出せずに個人事業の廃業届を提出することができますが、個人事業の開業・廃業等届出書上の「廃業の事由が法人の設立に伴うものである事」に記載がされていることが必要です。
事業復活支援金のおさらい
■対象者
新型コロナウイルス感染症の影響により売上が減少した事業者(法人、フリーランスを含む個人事業主)
■支給要件
2021年11月から2022年3月に月の売上が30%以上減少した事業者
■申請要件
従前の支援金も含め、登録確認機関により事前確認を受け発番されている事。(事前確認には無料・有料がある。)
売上減少率が50%以上の場合
→ 法人は最高100万円・200万円・250万円 *法人事業規模による
→ 個人は最高50万円
売上減少率が30%~50%未満の場合
→ 法人は最高60万円・90万円・150万円 *法人事業規模による
→ 個人は最高30万円
*法人の上限金額はその事業規模によるとは?
給付額は、上記の支給金額の上限額を超えない範囲で、「基準期間※1の合計売上高」と「対象月※2の売上高」に5をかけた額との差額。
→ 計算式
給付額 =(基準期間※1の5か月分の売上高)ー《(対象月※2の売上高)×5}
※1 2018年11月~2019年3月、2019年11月~2020年3月、2020年11月~2021年3月の3つのいずれかの期間のうち、売上高の比較に用いた月を含む期間。
※2 2021年11月~2022年3月のいずれかの月
5か月分を一括支給(2021年11月から2022年3月)
2019,2020の確定申告書と基準期間(加えて基準期間が2018,2021年にある場合はその年度の確定申告書)、売上台帳(基準月と対象月)、本人確認書類の写し、通帳の写し等(その他今後必要とされるもの)、基準月の1取引の請求書領収書及びその取引が記帳された銀行明細書ページ
2018年11月以降全ての事業の取引がある通帳明細、2018年11月以降の全ての各帳簿書類(売上台帳、領収書請求書など)
電子申請(ただしサポート会場を各都道府県に1つ以上設け全体の1割をサポートできる体制とする)
令和4年1月31日~5月31日(新規開業特例などの特例申請の受付は2月18日~)