社会保険労務士や行政書士が成功報酬を受取ることそのものが法に触れて「違法」になるという事はありません。*ここでの「法に触れる」とは、成功報酬を受取ってはならないという法令そのものが無いという事です。
しかし時と場合によって成功報酬が否定され得ることがあります。(時と場合によっては違法の判断の1つとされる)
「資格もなく、なんらの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益を損ね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになる( 『判例タイムズ』265号92頁)」
成功報酬が不適切とされている社会保険労務士
社会保険労務士でいえば、各都道府県の社労士会が個々の社労士に対してHPに掲載している成功報酬の記載をを改めるよう指導しているといいます。なぜなら、社労士の品位保持、職業倫理の向上の実現を妨げ、国民からの信用を失墜させる恐れがあるとして「労働社会保険の助成金、年金給付等について、依頼者に過度の期待をさせるような事例:「○○助成金獲得のノウハウ教えます。成功報酬は支給額の○%で。」という事例については是正・指導の対象になると、社労士連合会(社労士組織の頂点)が決めたからです。
茨城県の社労士会では、
不適切な表現としては、例えば、助成金受給や年金受給手続代行について、「受給率〇〇%、成功率〇〇%」等の文言を使って利用者の期待をあおるようなことや、「成功報酬」等の言葉を用いることは、公的な制度において要件を満たすことにより支給が決定され、逆に要件を満たさなければ支給されない各種給付にはふさわしくありません。また、労働・社会保険関係の手続きで社会保険労務士が代行することの結果を「成功」(成功しなければそこには「失敗」があるということになります)という表現をすることは適切ではないとされています。
と説明しています。
成功報酬という文言が好ましくなく、出来・不出来の結果に対して報酬を決めるのは、不正を助長することになる。だから駄目だと、そういう解釈を示しています。
行政書士の成功報酬
行政書士会が成功報酬について指摘をしているというのは見聞きしたことがありません。(行っているかもしれません)
私見ですが、依頼人が強引な営業を受けて成功報酬の契約してしまったとか、他の選択肢が一切無く成功報酬で依頼したとか、やむを得ず契約せざるを得なかったなどという事でもない限り、成功報酬に対して「結果を「成功」(成功しなければそこには「失敗」があるということになります)という表現をすることは適切ではない」などと理論立てて指摘するような程のことではないと思っています。
(私見)「成功報酬」、一般的な感覚からしてみれば実に分かり易く、悪くはないと思います。実際、相談者から「成功報酬で〇〇円ではどうでしょうか」と持ち掛けられることがありますが、単純に「報酬は後払い」という意味合いの事もあります。依頼者は.成功報酬という文言に深い思いを巡らせることは無く、その心は「後払い」、その程度です。そして、後払いだけど、依頼人に十分な利益がない場合は、その分の報酬は頂きませんという感覚です。
(私見)実際に、当事務所では成功報酬という報酬規程を定めていた時期があります。ただこれは依頼人のポケットマネーから報酬を支払う事が無い(経済的利益改め金額的利益から報酬を支払う)ようにといった依頼人に対する100%の親切心からのことです。出来、不出来に対しての報酬という感覚はありません。
(私見)とはいえ、もし成功報酬という文言が不適切だとか、違法だとかという話が出れば、そこは素直に成功報酬という規程を改めてればすむことです。意固地になって成功報酬という文言を使い続ける意味はないと思います。
こういった事を踏まえつつ、行政書士事務所では今の報酬規程が出来上がっています。
行政書士の成功報酬の違法性・適法性
行政書士の成功報酬を適法だと主張する場合、必ず出てくるのが次の法改正です。
成功報酬制の適法性(原則)
「2003年(平成15年)の法改正により、行政書士の報酬会則(報酬額の基準)が廃止され、報酬の自由化が行われました。これにより、依頼者との合意がある限り、着手金と成功報酬を組み合わせる体系は自由とされています。」
昔々の行政書士報酬は、公証人のようにあらかじめ決められた金額しか請求することができませんでした。しかし、規制緩和や独禁法の絡みもあり、その規定は廃止されました。
重要なのは、行政書士法等において、成功報酬がOKという法令や規則があるわけではないところです。法律の基本である民法上の「契約自由の原則」を根拠に、成功報酬の適法性を主張するしかありません。
契約自由の原則: 民法上の「委任(または準委任)契約」として、当事者間で合意があれば、どのような報酬体系を組むことも基本的には自由。
不当な成功報酬・不法な成功報酬
行政書士の成功報酬は、次のような場合に「違法」あるいは「公序良俗に反して無効」と判断されます。
① 法に抵触する成功報酬
ポピュラーなものは、他士業の業務を行い、その結果成功報酬を得ようとするものです。たとえば「訴訟の書類作成で勝訴したら成功報酬○○円」といったものです。実際は成功報酬の問題ではなく、業務の問題であるといえます。
② 行政書士法第10条(品位保持と不当報酬)
行政書士法第10条には「常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない」とあります。
リスク: 極端に高額な成功報酬(例:補助金採択額の50%など)依頼者の無知に乗じた暴利行為とみなされる場合、民法上の公序良俗違反(第90条)により契約が無効となるだけでなく、登録行政書士会からの処分の対象となる可能性があります。
③ 虚偽・不正申請の誘発
リスク:「許可が取れなければ報酬ゼロ」という強いインセンティブが働くことで、行政書士が事実を歪曲したり、虚偽の書類を作成したりすること誘発します。
とはいえ、これを挙げるならば、ほとんどの士業の業務が当てはまることになってしまいます。ゆえに成功報酬を否定する意見の根拠とするには弱いといえます。
ただし、社会保険労務士は、法律上「公正な立場で」と定めがあるので、士業の中でも比較的、成功報酬を否定する意見の根拠となりやすいと思います。
