備忘録。交通事故の20年前くらいの判例。

原告は、本件事故によりほぼ全身を打撲し、その治療のため、岸病院や帝京大学医学部整形外科、同附属病院に入通院したが、症状が固定した平成三年一一月二五日にも、鞭打損傷のため頸部等に痛みが持続したのであり、症状固定時までの治療は、本件事故と因果関係のあるものと認めるべきである。

この点、被告は、頸椎捻挫の七、八割が受傷後三カ月までに症状の改善がみられること等を根拠に、原告の症状は事故後半年か一年で治癒し得るものであり、その後の治療は、心因的なものか、本件事故と無関係のものであると主張する。なるほど、原告については受傷後七年を経て症状固定の診断がされ、また、通院も昭和六一年一〇月ころからは、二、三カ月間通院のないことが時折あり、数カ月間通院しないこともあつたのであり、被告の右主張は、首肯し得ないわけではない。しかし、原告が治癒したにもかかわらず通院を継続したものと認めることは到底できず、また、その症状が本件事故以外の原因で生じたのではないかとの疑いを差し挟むべき証拠もない。さらに、介達牽引が相当年月日を経てから開始されているが、その治療方法は医師が判断することであつて、仮に介達牽引法を早期の段階から開始した場合に短期間で症状固定し得たとしても、このことを原告の責めとするのは相当ではない。なお、後記認定のとおり、心因的なものがあり得るが、これは、後記認定のとおり被告及びその任意保険の担当者の言動によるものであることは明らかであつて、長期化した通院全般についても本件事故と相当因果関係が認められる。