行政書士は国家資格です。行政書士になるには都道府県の行政書士会(単位会という)に加入(日本行政書士会連合会名簿に登録される)して会員になければなりません。単位会は行政書士の強制加入団体になります。
行政書士を処分する者
行政書士を処分できるのは、行政書士会と都道府県知事です。
処分の種類は次の通りです。
- 単位会の処分
- 一 訓告
二 会員権の停止
三 廃業、解散又は従たる事務所の廃止の勧告
- 知事の処分(懲戒処分)
- 一 戒告
二 二年以内の業務の停止
三 業務の禁止
行政書士は両方から処分を受けるときもあれば、片方から処分を受けることもあります。
処分基準
1 行政書士に対する懲戒処分
懲戒処分の事由 |
根拠条項 |
懲戒処分の種類 |
他の法律で制限されている業務の実施 | 行政書士法(以下「法」という。)第1条の2第2項,法第1条の3ただし書 | 戒告又は2年以内の業務の停止(以下「業務停止」という。) |
ニ以上の事務所の設置 | 法第8条第2項 | 戒告又は業務停止 |
帳簿の備付け及び保存義務違反 | 法第9条 | 戒告又は業務停止 |
業務の誠実履行義務違反 | 法第10条 | 戒告又は業務停止若しくは業務の禁止 |
報酬の額の掲示義務違反 |
法第10条の2第1項 |
戒告又は業務停止 |
依頼応諾義務違反 | 法第11条 | 戒告又は業務停止 |
守秘義務違反 | 法第12条 | 戒告又は業務停止若しくは業務の禁止 |
重大な非行 | 法第14条 | 戒告又は業務停止若しくは業務の禁止 |
その他法令違反で悪質なもの | 戒告又は業務停止若しくは業務の禁止 |
以上、明文規定です。
単位会と知事処分の違いと傾向
行政書士会による処分件数は多く、法令違反のみならず、規則違反や行政書士の信用及び品位を害した行為も処分しています。知事の処分件数は少なく、法令違反の行為を法令違反として処分しています。
(これら処分とは別に、刑罰がある法令に違反すれば刑事裁判の判決で刑事罰を受け、またこれとは別に、依頼人と争い、裁判所で損害賠償などの民事裁判の判決を受けている場合もあります。)
つまり、行政書士は1件で最高4つの処分(正確には2つの処分と1つの罰と1つの判決)を受けることになります。
行政書士会は個々の行政書士の集団から成り立っている団体です。身内から処分を受けるという事実は、監督から受ける処分とは違う印象を与えます。知事は行政書士の監督者です。監督から処分を受けるという事実は、基本的に措置請求(処分を願い出るもの)が行われているので、何某の反感を得たという印象があります。
どうみても行政書士に悪意があり依頼人に不利益がある場合
行政書士が1件で最高の4つの処分(正確には2つの処分と1つの罰と1つの判決)を受けるという事は、刑事裁判で罰金以上の刑罰があり、民事裁判で金銭を支払うこと(または受取れないこと)を命じられ、単位会から処分を受け、知事処分を受けるという場合は、異なる4カ所から否定されていることになり、事実として悪い行いが認められたといえます。行政書士の弁解余地は封じられている状況です。
民事裁判で負けているという状況は、大抵が依頼人に金銭的な不利益(金銭トラブルなど)を与えていることになりますので、同情の余地はありません。依頼人と結託して書類を偽造して許可を取得したような場合は、一見して依頼人は利益(不法な)を得たように思えますが、偽造での許可は取り消しになりますので、結果的に相応な不利益につながりますが、民事裁判は行われません。
このように考えると、3つの処分(正確には2つの処分と1つの刑罰)を受けるという事も同様と考えられます。3つの処分を受けるという事は行政書士の悪意と依頼人の不利益が生じたという事になります。
単位会だけの処分の場合
規則違反や常識に反している場合、依頼人に直接関係のないものなど内容が軽いものを含め様々です。他の処分等を受けていないのは、内容が軽いからというだけではなく、調査・捜査の対象にならなかっただけということもあります。
単位会と知事処分のみ場合
言い換えればチームと監督の両方からダメ出しを出された状態です。捜査機関が行政書士の犯罪を認知できなければ刑罰もありませんので、つまりそういうことだと解釈できます。いろいろな思惑もあると思います。
知事処分のみの場合
知事処分があるときは、必ず単位会も事前に行政書士から聴取を行います。つまり、単位会が行政書士の処分を行わない場合は、行政書士として(単位会は行政書士の集団なので)何らかのやむに負えない事情があることを垣間見ることができます。
とはいえ、知事による処分が行われたということは、法に触れる行為があったという事なので、単位会のみの処分と比べると重大です。裁判所で刑罰を受ける(法に罰則規定があれば)ことになりますが、捜査機関が行政書士の犯罪を認知できなければ刑罰もないことに加えて、他にも、単純に「法に触れる犯罪ではない」という場合もあります。
行政である知事の処分の調査と、司法である裁判の刑罰は、そもそも性質が異なります。おかしなことですが、同じ法の違反なのに差が出るのは、行政は犯罪の捜査を行わず監督という立場から判断をし、司法の場合は捜査を行い参考人から聴取をしたり、第三者などの意見も聞いたりし、厳格に判断を下しているので、自然と差が生じます。(もっともこの差がとても重要)
また、他の視点から言えば、知事処分は行政書士法に違反したとき、刑罰は犯罪があったときという区別ができます。
=つづく=